19 司馬温公と韓信

 むかしむかし、支那の国で、支那ざぁ大きい瓶さ水汲んでおっかったど。ほして餓鬼べら遊んでいるうち、一人の餓鬼が木から落っで、その瓶さ入ってしまったど。水いっぱい汲んでだな。かまわねでおくと死ぬていうなで、みなでワイワイ、ワイワイていうんだげんど、誰も仕様なかったど。
 したれば、ほれ、一人のちっちゃこい餓鬼っこは、大きい石もってきて、ほの石で、ドイドイて叩いて、ほの瓶破って、ほして助けだって。後に司馬温公という人になったんだげんど、ほの当時〈瓶割り温公〉ていうたったて。
 ほれから、韓信という人いで、支那に。ほしてほれ、友だちといろいろ論判して、 「お前は間違っている、おれから負けたから、おれの股くぐれ」
 ていわっで、股くぐったったて。して、その人が後にすばらしい兵法家になったって。決して無理押しは駄目なもんだ、世の中は、短気おこして無理押しは、駄目で、やっぱり人の股くぐるような寛大な気持もたねどだめなもんだて、戦なていうのは、必ず無理がつきものだから、ほの、無理すねで、好機に投じてやるのが本当の兵法であって、あるいは時と場合には頭下げるのなの、苦にしていらんねていうわけで、韓信の股くぐりていうて有名な話だったていうなだな。
 どんぴんからりん、すっからりん。
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