15 百姓と壁屋

 共同浴場で、百姓と壁屋がいつのまにか論判になったんだど。
「いやぁ、あの塗り方だら、商売だも、おらだにかなわね」
 て、壁屋いうたど。
「いや、塗り方、塗り方ったって、畔ぬりぁ壁屋に負けらんね」
 て、いつのこま(いつの間にか)に、論判になって、んだらばていうわけで、田んぼで、上畔と下畔に別れて畔ぬりくら、はだったったて(始まったって)。ほして、 「お前だ、助手つけてもおれぐらい塗らんねべ」
 て、ヒドロ田で。ほしたれば、
「ほだごどない」
 ていうわけで、壁屋、泥ずうっと拵えで行って、ほいつ助手ぁ、持(たが)って渡したの受取って塗り、受取って塗りした。百姓は鍬でパタパタ、パタパタ、ひっくりかえして行って、たったて叩いて、ツゥーと塗る。壁屋二人して半分塗らんねがったって。
 んだから、物によっては〈商売は道によって賢こし〉で、〈モチはモチ屋〉だなぁて、壁屋も百姓さ頭下げだったてだな。
 どんぴんからりん、すっからりん。
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