12 赤い兎

 こいつは実話でふしぎな話で、今もってふしぎでふしぎでなんねぇて、友だちとみんなして語っている話だて、家のじさまだ語り語りした。
 ある沢さ、兎追い行ったんだど。友だちだ、春、堅雪になってから、藁仕事ばりしったてはぁ、飽きたもんだから、コシキベラ(たが)って、兎追い行ったって。ほうしてみんなして、沢から行ったれば、赤い兎ぁパッパッ、パッパッと走って行ったていうんだな。赤い兎だずも。
「あららら、赤い兎だ、赤い兎だ、あららら」
 ていうたらば、何だかほの原っぱのどこの小藪みたいなどこさ、ちょちょとくぐったんだど。
「ああ、ここさ入った、こさ入った」
 というわけで、コシキベラで掘ってみたら、中から人の死体出はってきたんだど。ほしたらば、ほいつ相生(あいおい)(上山市)の人が逝くなって探していたなだったど。
 昔のことだから、かかさわりなっどなんねぇから、黙っていろはぁて、みんなして固く口どめしてはぁ、行ったていうんだな。「雪消えっどわかっから」てよ。
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