11 大黒頭巾

 あるところに、ちょんちょこ大きくて、何とも仕様なくて、腹からずうっとして、肩から、まだ出はんなだったど。出はっから何とも仕様なくて、こいつさ、地蔵さまの頭巾みたいなかぶせて歩くなだったど。
 ほしてある時、ほれ、山畑、いっしょうけんめい頭巾コかぶせて(うな)ったれば、トコトコ、トコトコ、ほこさ若い娘来たけぁ、
「おっつぁん、おっつぁん」
 て聞いだど。
「おかちゃん、逝くしたが」
 てだど。
「なして」
 ていうたらば、
「おぼこ(うぶ)って、畑うないなのしったからよ」
 ていうわけだど。
「いや、はいつぁ、おぼこでない、ちょんちょこだ」
 ていうたど。
「ほうか、ほだえ大きいなか。実は、他でもない、おれも大きくて、おれなど合う人いねべかと思って、さすらいの旅してきたんだ」
 ていうわけだずも、ほれ。
「ほんでは、合せてみっか」
 ていうわけで、まず道のかげさ行って、薮からで合せてみたど。ほうしたれば大きいもんだから、音出したずも、ほれ。
「にやり、にやり」
 て、音したって。ほうしたれば、馬車ひきは、
「ああ、荷物はこっちだ」
 て、行ったんだって。ほしたれば、人のけはいしたもんだから、いきなり抜いたれば、
「セトン!」
 て音したていうんだな。
「ああ、瀬戸物はぼっこれやすくて駄目だ」
 て、もどったって。
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