2 猿地蔵

 むかしむかし、じんつぁとばんちゃいで、ほして山畑、いっしょうけんめい耕していた。
 ところが山猿出て、さつまいもも大豆でも何でもみな、ほの、にどいも(ばれいしょ)でも小豆でも猿にやっつけられる。隣の家では稼ぎ()いっぱいいたから、猿ば、ハジキ拵えたり何かえしたり、()ってやることできっけんど、じんつぁとばんちゃばりだから、猿ば追わんねがった。ほんでも、ほれ、
「みな猿に()っでしまったんでは暮さんね、ばんちゃ。んじゃなぜかええ方法ないんだべかなぁ」
「じんつぁ、じんつぁ、仕方ない、悪れげんと、んだらばおれぁ、あの、地蔵さまの帽子(しゃっぽ)と、地蔵さまの錫杖どを拵えで()っから、地蔵さまになって立って見たらええがんべな」
 ばんちゃ教えたど。
「ばんちゃ、はいつぁええ考えだな」
 ていうわけで、山さ行って地蔵さまの格好して立っていだれば、猿だたまげたど。 「いやぁいやぁ、地蔵さま、こだんどこさおいでなさるなて、こりゃ、お堂さ入れんなね」
 て、ほして、ほのじんつぁば猿いっぱい来て、立ってだじんつぁばかついで、こんどは、川、舟さのせて行ったど。舟さのせられっどぎ、重なったんだど。かさなったのさ、突張り掛ったのが千両箱だったていうんだな。
 ほして、ずうっと行って、お堂なてないもんだから、猿だ一生けんめい、木(おだ)ってきたり、草むしってきたりして、簡単なお堂拵えで、ほのじんつぁば、ほこさ祀ったて。ほして、重なったまんま、突張りかったまんま祀ったて。ほして猿ぁいねぐなったから、じんつぁ、こうして見っだれば、おっかがっていたのは、千両箱だって。
「こりゃ大したもんだ」
 ていうわけで、そいつ失敬してきたどはぁ。ところが、ほれ、こんどすばらしい金持ちになったもんだから、
「なして隣で、あだえ金持ちになったべぇ」
 て、隣のじんつぁ聞きにきたど。したば、
「こういうわけで、おれぁ山さ地蔵さまになって、地蔵さまの帽子かぶって、木の錫杖ついんだれば、お猿さんだいっぱいきて、お堂さ入れんなねて、おれば()て行って、突張り掛かた。突張りかったのが千両箱で、はいつ失敬してきたっだなぁ」
 て語ったど。
「ほんでは、おれも」
 ていうわけで、山さ行って立っていだれば、
「ありゃ、りゃ、またここさ地蔵さま出っだ、こりゃ」
 て。
「ほんでは、お堂さ入れらんなねっだなぁ」
 て、猿だ、いっぱい集まってきて、ほしてじんつぁば舟さのせて、ほして()て行った。あんまり面白いので、じんつぁ笑ったど。アハハ、ほしたれば、
「こりゃ、地蔵さまでない」
 ていうわけで、川の真中で川さ入れらっだんだどはぁ。ほして、ほうほうの体でもどってきたって。
 ほして、猿だ、つねがね、ほのじんつぁ、追ってばりいて、さつまいもだ、何だって猿さ食せねがったわけだど。んで、そういうこともあったべていうわけで、川さ、ただ入れらっで、川から、ほうほうの体で、やっと上がって来たって。ほして、人の真似したって分んねもんだなぁて言うたったて。
 どんぴんからりん、すっからりん。
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