29 南の山の馬鹿聟

 南の山から聟もらった。その聟は稼ぎ者だし、男前も大変よかったが、世間は 全然分かんねんだげんども、おどっつぁま、おどっつぁまて仕(つか)える もんだから、 大変可愛がっていた。ほして本家の家で嫁取り祝儀あって、そこさ二人でお招ば れしたんだ。ほして、
「お前も、いろいろ世間のこと憶えていんなねんだから、よっく見て大人になん ねぇぞ」
「はい」
「お祝い、なんぼ持って行ったらええんだか」
「一人だらば五千円、二人だったら七千円さ反物の一反もつけて持って行かんな ねべ。この間反物屋さ行ったらば、安くまけるていう、少し傷あっけんども、よっ く見ないと傷分んない反物あっから買って来た。んだからそいつ持って行くべ」
 そして、
「このお土産はお前出せ。お前はこれから大人になんなねだから、お前、お土産 物出せ」
 て、そしてその聟はなかなか南の山から来たげんど、芸人だったど。唄もうた えば踊りも知った。謡も知った。
「おどっつぁま、御祝儀に行って、唄うたって悪(わ)れべがっし」
「ああ、ええどこでない。ありだけ祝って来い。んだげんども、いつ、時でもな い時唄ったりすっど、われから、おれ合図すっから、そんどきお前唄うようにしろ」
「はい」
 て出かけたど。そして行って、まずちょっと遅っで行ったら、親族衆もおそろ いんどこさ行って、そして、
「お前、お土産、ほれ、出せ」
 て、合図したところぁ、聟は出した。
「おどっつぁまどこの前から相談したどこだっす、本当だらば五千円も持って 来っど、ええどこだげんど、二人お招(よ)ばれしたから一万円とも行くまいからまず 七千円でええがんべなて、七千円包んで来たどこだっす。そいつさ反物一反つけ たらええがんべ、おどっつぁま、この間、反物屋さ行ったらば、つうと傷あっけ んども、二千円ていう札ついっだもんだから、そいつ買って来たから、そいつ持っ て来たどこだ。こいつ納めておくやい」
 家で相談したことみな喋(しゃべ)くって しまったんだど。そうして向こうの家でもはぁ、 あっけにとらっでだとはぁ、ほうしてちょいっと親父の顔見たところぁ、親父は にらみつけてたて言うんだ。
「はぁ、今謡い唄えていうもんだ、目で合図したね」
「ほんじゃ、ええがんべがっす。おどっつぁま」
 ていたけずぁ、高砂やってしまったていうんだ。そうすっど、今度聟は目など くっついて立派に力んで、なかなか上手だていうんだ。そうして唄って、ちょいっ とおどっつぁまの顔見たら、さっきだよりもにらみつけらっだんだど。
「はぁ、こんどは唄うたえて言うごんだな」
 こんどは松坂を唄って、ちょえっと親父んどこ見っど親父はまだにらむ。ほう して、おしまいには踊りおどってしまった。おどっつぁま、やしゃぇながって、 お祝儀さはまんねで、聟の手引張って、がらがらと逃げてきた。
(宮下 昇)
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