22 猿地蔵

 山さ行ったら猿が岩の割れ目さ酒造っていた。いわゆるサルナシ酒だ。そいつ 飲んでとっても廻って、そしてええ機嫌なったもんだから、ゴロリ寝っだ。そし たらそこさ猿が大勢出てきて、
「あらら、おら方の地蔵さま、どこさ行ったと思ったば、ここさ来て眠てやった。 早く持(たが)って移し申せ」
 と、みんなでお持(たが)きしたど。ほらヨイサ、ヨイサとみんなで持って行ったてい うなだ。そしたら大川あった。そして川さかかったところぁ、
「気ぃつけろよ、みんな石だから、転ばねように、地蔵さまどこ落したら大変だぞ」
 て行ったら、こんどぁ褌からキンタマがぶら下がった。
「おお、何か下がったぞ」
 ほうすっど親方猿ぁ、
「下がったは何だ」
 そしたら、じじは、
「お経、小袋」て言うた。
「ああ、お経の小袋だど、ありがたいこと、ありがたいこと」
 ほうしたれば、こんど屁ブウと出た。
「おお、何だ。今の音ぁ」
「鳴ったは何だ」「時の太鼓」「ああ、時の太鼓だど、ありがたいもんだ」
 そのうちにその屁はくさいもんだから、猿の鼻さプーンと匂って行った。
「くさいは何だ」「香の煙」「香の煙だど、本当にありがたいことなぁ」
 て、かげさユサユサと持って行ったど。そして猿の部落さ行って地蔵さまんど こさ、ちゃんと飾り申して、
「さぁ、やっと戻ったから、こんどお祀りしろ」
 と、そして餅搗くやら、お菓子を上げるやら、お供えものいっぱいして、みな 帰って行った。そいつごっそり持って逃げて来た。そして家さもって来てみたら 隣の欲ふかばば来て、
「何だ、この御馳走、一体どっから持って来た」
「おらえのじじぁ、山さ行って寝っだら、猿ぁ来て、おら方の地蔵さまだて言う て、つれて行って祀って呉っじゃもんだから、そっから持って来たんだ」
 て言うた。
「ははぁ、ほんじゃ、おらえのじじもやんなね」
 て、ほうして、
「じさま、じさま、隣のじじなど、猿んどこさ行って、いや、大した御馳走いっ ぱいもらって来たから、お前も行って来い」
「何て行(い) んごんだ」
「何てええから、かまわずええから、行ってさえ見っどええんだから行ってみろ」
「んで、行ってみっかなぁ」
 て出掛けた。ほうしてそこさ行って寝っだど。ほうしたところぁ、猿ぁ来て、
「何だ、まだここまで来てやったどれこ。早く連(つ)れ申せ」
 て、また同じに持って行った。ほうして川渡っていそいそと行ったところぁ、 また汚い褌から、キンタマぶら下がった。
「下ったは何だ」
 て言うところぁ、
「キンタマだぁ!」
 て言うた。
「何だ、キンタマだなて言うでこ」
 そうしているうちに、屁ブウーッと出た。
「なったは何だ」
 したれば、
「屁だ」て言うた。
「何だ、おかしいぞ、この地蔵さま」
「いやいや、くさいにもくさいにも、そのニンニク屁でもあんべか、何だか」
「くさいは何だ」
「屁だもの、くさいごで」て言うた。そうしたら、
「何だ、こいつぁ地蔵さま、んない。じじだ。こんげなものに騙さっでいられる もんか」
 て、こんどはみんなで顔、かっつぁいで、めちゃくちゃに食っちゃびらっで、 川の中さだんぼらぶん投げらっで、ほうして、
「さぁ、歩(あ)えべ、 歩(あ)えべ」
 て行ってしまった。じじは御褒美もらいと思って行ったな、 大した怪我(けが)して、 血だら真赤になって家さ帰って来たんだから、人の真似なてして、欲たけねんだ けど。どろびん。
(宮下 昇)
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