15 瓜姫子

 じじとばば暮らしったど。そしたればじじとばば、子持たずなんだな。そして 子ども欲しい子ども欲しいていたところが、その瓜が流っで来て、瓜食ってみた ところが瓜の種子から美しいおぼこ生まっじゃわけだ。そうすっど、
「こいつぁ、瓜から生まっじゃから、瓜姫子と名付ける」
 と、こう言うて名付けたわけだそうだ。そしていたところが、じじとばば、稼 ぎに行くとき、瓜姫子、機織りしったもんだそうだ。機織りしてで、稼ぎに出て 行くときに、
「隣の天邪鬼は、せめられっから、戸開けろだの、こうだのて言うたて、決して 開けんなよ」
 こう言うて、じじ、ばば、稼ぎに行ったていうんだ。そして行ったところが、 やっぱし案の定、昼間に天邪鬼、「瓜姫子、瓜姫子、遊べ」ていうて来たんだど。 そして機織り一生懸命しったところが、
「今日、これだけ織れって、じじとばばに言わっだから、こいつ織んねうち、じ じちゃとばばちゃ来たとき、何しったっておんつぁれっから、こいつ織んなねか ら、後に遊ぶから…」
 こういう挨拶したど。そしていっけんども、その天邪鬼、ねっちょだから、
「いや、開けろ、開けろ」
 ていうもんでいだんだな。そうすっど指一本入るほど開けて見ると、河童みた いなもの立ってだていうんだ。見れば恐っかないていうんだ。
「んだから開けんなて言わっだな、開けてこりゃ」
 て思って、戸閉めっけんども、こんどとても指一本入るたけ開けたら、その天 邪鬼に敵わねていうんだ。瓜姫子の女の力では…。
 そしてるうちに手入るほど、腕入るほどだんだん開けて、身成(な)り入るほどして、 そうしてはぁ、こんど寄って行ってその瓜姫子、頭からびりびり皮剥いではぁ、 食って、そして瓜姫子の衣裳着て、機さ上がっていたていうんだ。そして帰って 来たところぁ、一生懸命で機織っているもんだから、
「にさ、暗くなったに、やめんだ」
 て、そのじじ、ばば言うげんども、
「いまちいとだから…」
て、決して機から降りて来ない。そうしたば、
「瓜姫子の好きなトコロ掘って来たから、ほだから来いて言うなだ」
 て、じじとばば言うど、
「じきに行く」
 ているわけだ。そしていよいよ機から降りて来て、見たところぁ、じじとばば どこさ来て、じっと下向いているわけだ。そしてトコロ茹(ゆ)でだな、「にさ、好きだ べ」て突出(つだ)す と、トコロの毛もむしんねで、皮も剥(む) かねで、ガムガム食う。
「なんだ、にさ、そんなことして今まで食ったことないに、そんなことして食う」
「毛ぁ毛のくすり、皮は皮のくすり」
 て言うて、その天邪鬼、くったていうなだ。そしてまず、ちょうど後ろに池あっ たそうだ。その池のほとりの木さ来て、「瓜姫子の機さ、天邪鬼はぶんのって、チー ロリ、ヌタポン」て鳥鳴くど。「はあておかしい鳥ぁ鳴くごんだ」て、まさか天邪 鬼だとは思わねがった。
   瓜姫子の機さ
   天邪鬼はぶんのって
   チーロリヌタポン
 て、なんぼも鳴くど。
 それから気ぁついて、見たところが天邪鬼だ。こんどじじばば、めんごがって いた娘、その通りさっだ。戸突(とつっ)張り棒持(たが)って叩きつぶしたど。そして野さ持って 行ったか、瓜姫子を立派に埋めて、桜の木植えたど。そして天邪鬼埋(い)けたどこさ、 萱棒三本とって、チャカチャカと立てて来た。ところが、萱の根っこざぁ、真赤 なのは天邪鬼の血だど。どろびん。
(遠藤富雄)
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