4 猿と蛙の寄合餅

 どこかで餅搗く段取りの日あったそうだ。そうしたところぁ、猿の子分の方、
「どこそこで餅搗くど、あいつ、なじょがして食う工面しろ」
 て、猿ぁ一人、口たった。そしたらちょうど脇に池あったそうだ。池にいた蛙ぁ、 ひょこんと浮き上がって、池の縁(ふち)のへりさ、ちゃんと上がって、 猿ぁ一人言語っていたどこさ出てきたど。そうすっど蛙は、
「そげなことぁ雑作ね。んじゃ、これからその餅食う段取りすんべ」
 て言うたわけだ。そうしたところぁ、
「おれぁ、池端でおぼこの真似すっから、その隙に猿ぁ臼背負って行げ」
 こう言うごんで、蛙と猿ぁ約束したわけだ。そうすっど池端に居て、ギャフギャ フ、ギャフギャフていうもんで、池さ入って、オフギャて、まったりして、
「ほれ、おぼこ入った」
 て言うわけで、家中みな出て行って餅搗きなど、がってにしないで出て行って しまった。その間に猿ぁ臼がらみ背負って山さ逃げて行ったわけだ。そして山の 上さ行って猿はどっこいしょと、まず降ろしたわけだ。そうしたところが、臼だ から大人しくしていねで、山の嶺からゴロンゴロンゴロン。餅はあっちさふっつ き、こっちさふっつきした。
 そうすっど蛙は追かけて行って臼ぁ転んで行った後、あっちさふっついていっ ど拾い食い、こっち拾って食いして、蛙は後始末して降りて来たところぁ、猿は 欲ふかいから、びんびんと追っかけて、臼さ喰っつけたな食うべししたところが 熱い熱いていたときに焼けたど。んだから顔面と尻焼けて赤いんだど。どろびん。
(遠藤富雄)
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