2 かおすと狐

 かおすは雑魚いっぱい獲(と)って来て、そして煮て食うべと思っていたどこさ、狐ぁその匂い嗅(か)ぎつけて行ったど。ほして、
「かおす、かおす、何しった」
「まず、寄れ。雑魚いっぱいとって来て、煮て食うどこだ」
 ほうして御馳走なったど。ほしてかおすはいっぱい食ってるもんだから、骨など頭などは残して、身のどこばっかり食うげんども、狐は骨でも頭でもガリガリガリガリみな食うていうんだ。
「そのように、骨など頭など食うことない、んねが」
て言うど、「もったいないから…」
「そんなもの、なんぼでも取れるもんだもの」
ほうしたら、
「いや、なじょして獲ったもんだ」
 いつも、ろくでない狐だから、一つ騙(だま)してやろうと思って、
「ああ、こんなもの簡単だ。夜、宮下の裏の池さ行って、ほうして、なるべく寒い晩のがんがん凍(し)みる晩に、尻尾入っで置け、そうすっど尻尾さ雑魚ぁみな食い付っから、朝げそいつ引張り上げて来ればええ」
「ああ、ええこと聞いた」
 と思って、待ち構えっだところぁ、寒い寒い晩で、「いや、今夜だらええ」と思って、入り込んでいたど。ほうしたら、段々尻尾引張らっで来た。
「よっぽど食(く)っついっだな」
 と思ったげんど、欲ふかいもんだから、いまチィト、いまチィトと思って朝方まで尻尾ぶっ込んでいて、いよいよ今度夜明けっど悪(わ)れと思って、引張ってみた。取って来(こ)ね。
「はぁ、糞!こんどはいっぱいかかったぞ」
 て、引張っけんども、いや、絶対とっで来ねていうんだ。終(おしまい)にぁ、尻尾抜けるくらいになった。こんどぁ泣き出した。

   雑魚もカジカもいらねから
   尻尾ばり抜けてこい
    エンヤラサ エンヤラサ

 て、引張った。なんぼ引張っても取(と)んね。「雑魚もカジカもいらねから、尻尾ばり抜けて来い、エンヤラサ、エンヤラサ」。泣き声立ててはぁ、おしまいにはオンオン泣いて引張った。ほうしたらそいつぁ、人間さその文句聞えないで、ギャアギャアて聞えたもんだから、
「そらまた、かおす来あがったか」
 と思って行ってみたら、狐いた。尻尾凍みついて取んねぐなって、ギャアギャアていたもんだから、
「この畜生、また来あがったか」
 て言うんではぁ、カギやら棒やらもって、ボガンボガン引張だがっで、とうとう殺さっでしまった。ほだから人真似して雑魚とるなんてしないごんだけど。人の家の雑魚とって来るなんて、そういうことしないごんだけど。どろびん。
(宮下 昇)
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