7 蛇退治

 むかしあっけど。
 殿さまに、「お前、あそこの山に大蛇いたから退治して来い」て言わっだ。
「殿さま、大蛇など、おれ、とっても退治さんない」
「んだげんど、お前でないくて退治さんねから、村人困っから、お前でないど退 治さんねから行って来い」
「ほうか、ほんじゃ何とも仕様ない。大蛇に食れんべげんど、おれ行かんなねご で」
 て思って出かけた。それで山の中腹さ行って、ここら辺で一服すんべと思って 一服してだば、縦縞の着物きた若い男が傍さ寄って来て、
「旅のお客さん、何用あってござった」
「おれはここに住んでる大蛇退治して来 (こ) いて、殿さまから言わっじゃから来たど ころだ。どこらに大蛇いんべ」
「この山にいた」
 と、その若者ぁ言う。
「なじょしたら退治されんべ」
「おれの考えでは、煙草のヤニをいっぱい樽さ作って、そいつをかけっど大蛇が 死ぬそうだから、そいつをかけろと言うので、煙草いっぱい吸ってたどこだ」
 て、そして背負ってた樽さポンポンとはたいてたど。そしたば、
「お前、きらいなものは何だ」
 いろいろな話しているうちに、「おれは煙草のヤニは大嫌いよ。ほんじゃお前は 何嫌いよ」
「いや、おれ、世の中で一番きらいなものは、金だ」
「そうか」
 て言うて、そのまま別っで、そして煙草いっぱい吸って、樽さヤニ、でっつり 拵えて、山の天辺 (てんぺん) さ登って行って待ってだば、大蛇出てきた。そして大蛇さかけ て、
「ああ、ええがった、ええがった。大蛇さかけたし、こんでは死ぬべ」
 と思って家さ来て、その夜寝た。そうしたば夜中ごろ、ものすごい音立てて来 たど。何だと思ったば、自分が寝っだ枕元さ、山ほどの金集ってだど。
「あれ、今日、若者と話したって、一番きらいなもの何だっけ、おれ、金がきら いだて言うたっけ、そのとおり、何なごんだべ、こいつ、こがえなこと起きた」
 て、考えてみたけぁ、そいつが蛇に化けていたなで、おれにヤニかけらっだか ら、こんどおらえのきらいなものかけだんだなと、その男は大金持になったけど。 んだから蛇退治に行くときは、ヤニ持 (たが) って煙草持って行んこんだ。
(関場)
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