31 狐の鳴き声

 狐の「オギャァ鳴き」ていうのは、一匹では鳴けねもんだ。狐ていうのは、二 匹向かわないと、オギャァ鳴きしない。こっちで「オホホ」ていうど、そっちで 「ギャァ」という。オー・ギャァ。オー・ギャァていう。これが「オフギャァ、 オフギャァ」ていうのと同じに聞えるんだそうだ。それ、窓のぶっさけから何回 も見たことあるという話だ。
 ほれから、人を化かにする狐ていうのは、よい狐、祀らってる狐だって、何か 悪いことすれば、アダされるていうけれども、祀らってる狐というのは本当の狐 であって、狐にも二種類あるということきいてる。
 狐とケツネというのだそうだ。
 武士の時代に、侍が立っていっどき、平民は立たないように、ケツネていうの のは、祀らんねために、アダしたもんだ。ほんで狐には正一位稲荷大明神ていう 大した位をもった狐がいる。正一位稲荷大明神ざぁ、この日本に支那から稲穂を くわえてもってきた。あの海を渡ってきて日本を開いた狐だ。今ここで百姓して いんのも、そのおかげだし、豊葦原瑞穂の国という銘もその時からだ。
(平田幸一)
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