17 和尚と小僧 ―プウプウ・パタパタ―

 珍念・安念という二人の小僧が、ある寺の和尚に仕えていだったど。よくかせ ぎ者で、庭掃除、拭き掃除、掃き掃除、何でも和尚に言われるままに働いている んだけれども、ある日、和尚は夜、二人の小僧の休んだところを見て、焼餅を始 めた。そして灰の上なもんだから、灰を吹こうとして、プウプウ、また炉椽にパ タパタと餅を叩いて、うまそうに食った。
 これを見た二人の小僧は、
「和尚さまばり餅食ってだ、なぜおらだに一口食わせねなだ。うまくない」
 というんで、二人の小僧は約束して、翌朝、和尚さんさ、
「珍念・安念とは言うげんども、小僧々々と呼んでる。わたしらをこれからプウ プウ、パタパタと呼んでもらいたい」
 て、和尚にたのんだ。和尚は約束した。またその晩、餅焼きしてプウプウ、パ タパタとした。
「和尚さま、何御用ですか」
「ああ、何も言わなかった」
「んだげんどもプウプウ、パタパタていうから、私らを呼ぶんだと思って出てき て、和尚さま」
 和尚も当惑した。餅をかくれて食おうとしたが、餅を子どもらに食せてしまっ た。ほしたら、今度翌日、和尚は檀家に経を詠みに行くときに、たまたまなめて おった水飴の瓶を、小僧どもに食わせたくないので、
「こりゃ、プウプウ、パタパタ、この瓶に入っていんのは、毒だから食べてはな んねぇぞ。これ食べっど死ぬからな」
 ていって、和尚は出て行ったど。ところがその瓶の中にはおいしい水飴があっ た。なめてるどこ見たこともあるので、二人でそっとなめた。したら、なかなか うまい。まずしっかり空になるまでなめてしまった。ところが、さて困ったこと は、和尚さまが帰ってきたときは、何て申訳したらええんだかと、それで和尚が 大事にしておった湯呑み茶碗を、二人で相談して割ってしまった。そこへ和尚が 帰ってきた。二人が和尚の前に手をついて。
「和尚さま、とんな(大変に)悪 (わ) れごとしてしまった。掃除している最中にこれ をこわしてしまった。申訳なくて死んでおわびしようと思って、和尚さまに、な めれば死ぬと言われたげんども、死んで二人でおわびしようと思ってなめて、い くらなめても死にようがなくて、今こうして苦しんでいるとこだ」
 て話した。この賢い小僧のために、和尚も叱ることさえ出きなくて、許してやっ た。そういうことだ。どろびん。
(平田幸一)
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