6  十二支ばなし― 動物の役目―

 むかしむかし、ある時に、天の神さまが、この広い世の中に住んでる動物たち に、いつのいっか、何時頃までに、お前たちがわたしの傍まで来い、位を授ける ということをお告げになった。すると動物たちは神さまから位もらえっこんだら ば、
「おれは一番先に行ってやる」
「おれだ」
 と、みんなが行く日を待てわびていた。ところが牛は、
「おれは足はのろいし、今からにも歩いて行かなくちゃ、神さままではその日に 行けないから、今日から出だそうかなぁ」
 て、そして牛は出たそうだ。そのうちに、ねずみが出てきて、ねずみは賢こい ので、牛の背中にひょいとのって行った。
「これは、くたびれもしないし、楽でええ、牛は賢こいし、物覚えもええから、 牛だら間違いもない。おれ、牛の背中さひょこんとのって行くべ」
 その次にいろいろな動物来た。その次に猫が来て、みんなに聞いたげんど、誰 どて猫に教える者がなかった。
「おれ、忘れてしまった。何日だったけがなぁ」
 て、教えねわけだ。牛にのってねずみが出だしたもんだから、聞いてみた。と ころが、ねずみも教えねがった。
「おれも知しゃねなよ。んだげんども、ちょっと用達しに行ってくるもんで、牛 にのせてもらって、これから出だすどこだ」
 そして、天の神さまのそばまで牛は行って、
「ああ、やれやれ、来たな、天の神さま」
 て、いたところが、ねずみはそれより早く牛の背中からポンと降りて、神さま の前さ一番先に行ってしまった。すっどねずみは一番先に、牛は二番目になって しまった。三番はトラ、四番はウサギ、タツ、ヘビ、ウマ、ヒツジ、サル、トリ、 イヌ、イノシシ、と十二匹の動物が、まず、天の神さまから位をさずかり、
「あなたたちは、これから人間の世界に行って、日を守り、月を守り、年を守っ てやりなさい」
 ところが、猫はその中に入ることができないがったど。それで今でも猫はねず みに聞いたとき教えてもらえば、猫も入れたのに、
「あの野郎、おれに教えなくて、一番先に行った。うまくない野郎だ」
 て、今になっても猫はねずみをねらっている。どろびん。
(平田幸一)
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