31 福の神と貧乏の神

 ある村で、とっても心の立派な正直な人いだったてよ。ほしたらお年取りの晩によ、いや、ひどくやつれた道心が鉦(かね)叩いて来たってよ。して、一夜の宿貸して呉ろて来たけげんど、お年取りなもんだから、隣から隣まで、みんな邪険にして、
「まず、今日、年取りだから」
 て、ことわらっじゃて。したら、その正直な家で、
「ああ、泊らっしゃい、泊らっしゃい」
 て上げだって。家の人もお湯さも、みななど入んねうち、その道心坊お湯さ入れで、魚、家の人も同じに合せて、酒のませて、そうして夜っぴいて夜話して寝たど。
 そしたら次の朝げ、御飯だからって行ってみたって。そしたら、その音しない。
「つまんねなぁ」
 なて見っだって。布団ひったぐって見たら、布団の中から慈光さした。何だべと思ったら大判・小判、布団の上さたくさん、布団の中さ並べて、布団かけで、開けてみたら、慈光さして、いないってよ。ほしてそこの家、貧乏だったげんども、にわかに大した金持になってはぁ、いなくなったから、堅くその金、しまっていたんだど、んだげんど段々に使って、それが村の噂になったってよ。それでこんど村の狡猾な男ぁ、
「おれぁ一つ泊めてみんべ」
 どて、夜、よっぴいて起ぎっだら、やっぱり道心坊、鉦叩いて来たってよ。ほしたら、「泊めてくろ」なても言わねな、むりむり泊めだもんだど。
「それ、おら家さ泊まれ、おら家さ泊まれ」
 て、ほしてお湯さ入っで、あの家で御馳走したより、より以上御馳走すっど思って、すこだま御馳走したど。ほしてはぁ、寝たど。次の朝げ早く、金見っだいばっかりで暗いうちに起きて行ったて。ほうしたら道心坊、腹病みしったんだど。ほうしてはぁ、食べすぎて医者あげんなねごど出来てしまった。
「薬呉ろ」
 なて、おまけに言わっじゃど。親父怒って、
「金神と思って泊めたら、貧乏神」
 て言うて、早ぐ行げて言うて追ったてでやってしまったてよ。んだから人の真似して正直に神宿るで、狡猾なくせに人の真似するもんでないど。そんで今でも大年取りは夜遅くとって、遅くまで起きてる。子持ちは早く年取るということになっているど。

>>四方ぶらりん 目次へ