24 姥 捨

 むかし、あるところで六十二才になれば年寄り、男でも女でも山さ捨てることが習慣になってた村があったてだな。
 ところが親孝行な息子で、とても六十二才になったからって、山さ捨てて来らんねくて、ずいぶん考えて、考え抜いたあげくに、この家の床の下さ穴倉掘ったんだど。そしてこんどぁ、そこさ御飯運んで食せて、知しゃん顔しったど。ところが何か、大切な木、どっちが元だか、裏だか、同じようなもので分んね。それを殿さまが大した宝物で、どっちが元なもんだか裏なもんだか当てた人に、御褒美やるって、こういうことになったって。
 ほうすっど早速その息子が床下さ降っで行って、じっちゃに聞いてみた。ところが、じっちゃに聞いてみた。ところが、じっちゃ言うには、
「あんまりどんどんという川でなく、静かに流れる川さ持って行って、それを流して、そうすっど元の方が重いから、自然と元から先に流れるもんだ」
 て。
「先さ出たなが元、こっちが裏だから、申し出てみろ」
 て言わっだど。そうしたら早速、元と裏が分ったってよ。それから、
「灰で縄をなって来い」
 て言わっで、それも大きに迷惑していたら、またじんつぁに聞いてみたら、
「縄をなって、その縄さ火つけて、そしてそれを持ってるものの上さ置いで、そして火をつけて焼いで、そのまま、そっくり持って行くじど、灰でなった縄だから」
 て教えらっじゃ。あんまり近頃、若い者に似合せない物識りだから、どうしてこんなに物識りなもんだか、一つ聞いてみんべて、呼ばって聞かっじゃって。したら、隠さず、
「実はこういうごんで、おれが親、とても山さ、六十二才になったから捨てるなんていうこと、とてもおれは出来ないから、考えに考えた末、うちの下さ穴倉掘って隠して、御飯食わせて置いたから、おれどこどういう風にでもしておくやい」
 て、殿さまさ行って言うたど。ほしたら、そんなこと、殿さまも随分考えて、みな捨てるなんていうこと、悪いことなんだから、罪など着せないから、六十二才になったがらって、投げないで、必ずいつまでも長らえるようにて、それからそこで捨てなくなったって。親孝行が一生の宝だってな。どろびん。

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