22 おはつとおさん

 おはつと言うなは先の人の子ども。おさんと言うのが自分の子どもでよ、ほしたら、「何とかして、自分の子どもに後とらせたいなぁ」なて、そのかぁちゃんが思ったわけだ。
 そうして、何とかして、こいつ病気にして殺して呉れんべ、手かけてひねり殺せば分かんべし、するよりも、いっそのこと病気にさせてくれんべなぁて、そうしていろいろ考え抜いたあげくに頭さ、糸取りする枠さ紙貼って、そさローソクつけて明るくして、頭明るくすれば角見えるわけだ。そして顔かくして面かぶって、頭さ赤いな人参の角出して、拵(こしゃ)ったんだごで。
 そしてコンニャク舌(べろ)、冷たいなで、夜寝て寝静まった頃、おはつと言う先妻の子どものどこさ来て、顔かくすと布団はいで、べろべろと舐めるなだど。そうすっどおはつが毎日顔青くなって、そしてはぁ、病気になって寝てんなだど。と、毎晩来るもんだから、おさんとかぁちゃんが寝でっど、毎晩かぁちゃんが出て行くもんだから、後つけてみたんだど。そうすっど別な座敷さ行って、たいした構えしたじもな。白い着物きて、枠かぶって、頭さローソクつけて、そうして人参の角で、コンニャク舌で、フワリフワリと出て行くんだど。ほしたら今度、
「何だべな、どこさ行くべなぁ」
 と、後つけだど。ほしたら姉ちゃんのどこさ行って、ほしてヒーヒーと泣く声する。ほうすっど毎日考えて、姉ちゃんが死ぬそうになって御飯も食べなくなったからで、自分も短刀持(たが)って、
「姉ちゃん、こっちの座敷さ隠っでろ、おれ、ここさ寝ててみっから」
 て、そがな殺すなて知しゃねもんだから、おはつて言うな、陰さ寝てろて言わっだ通り寝っだど。そうすっど化けものどこ、突通したんだど。そしてこんど自分で血刀持(たが)って、代官さ出きたど。ほうしたらその人、もっぱらの噂になっていたど。んだから、情けのある人で、それは、
「おっかで無いごで」
 て、教えだんだど。
「いや、実際おれのおっかだ、おれどこめんごくて、そういうことしたなだ」
 て言うたら、
「ほんねごで、それは化物ていうものは、夜が明けっど、みな毛が生えて、本物の化物になってしまうから、早く、これから行って土掘って、そして埋めてしまえ」
 て教えらっじゃんだど。そして役人に教えらっじゃはぁ、二晩も置ぐじど、ころっと獣になっから、
「獣になんねごで、おっかだもの」
 て言うたげんど、いっこうに人殺したなんていう罪着せねがったど。かえって親孝行の御褒美もらって、姉ちゃんと仲ええくして暮らしたって。

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