20 短かい話

 あるところに、山の神さまさ、男だか女だか、化物だか人間だか知らね者いだど。そういう噂立ったごんだど。そうすっど、ほんじゃらば、なじょなごんだべと、行ってみたらええがんべと、村の〈鬼(おに)平(へい)〉な若衆出かけたもんだど。そうしたら、そこの家に頓智のええ若者いだったど。
「化物なて、人だごで」
 て、言うたど。そしたら、
「男だか、女だか」「顔見たら、わがっこで」
 昔は亭主持つど、歯染めだもんだ。んだから、
「歯見だら、一番分かっこで、男だか女だか、化物なて、人だごで」
 て言うたど。
「何か疲れて寝っだんだべ」
 て言うたんだど。
「みんな化物だなて、あんまり様(ざま)悪れ着物きてっからだごで」
「ほだら見たらええごで、ほでなしに寝てるもの」
 口開けて見たど。はなしで歯一本もないがったど。どろびん。

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