18 黄粉と爺婆

 じさまが庭掃きしったら、豆落っでいだっけど。半分は種子、半分は黄粉にすんべと思ったど。ほうしたら黄粉こしゃって、すでにじんつぁと食(た)べんべと思っていたら、隣の人来たごんだど。「ばんちゃ」て来たから、半分の黄粉だから、それいたましいから、隠せていうもんで、じんつぁ尻の下さ押っかったど。
 そしてるうちに、屁出たど。プープーッ。そしたら黄粉みな吹っとんで行って、向うの山の笹っ葉さくっついだど。
 じじ、黄粉探(た)ねに、ずうっと、
「どこまで吹っとんだんだかなぁ」
 て行ったど。ほうしたらキジは笹っ葉さくっついっだな、ペタペタ、ペタペタて舐めてだもんだから、
「この畜生、他人(ひと)の黄粉舐められんめちゃえ、おらだ、ばばといっこう食ねうちに、畜生の分際で食うざぁないごで」
 て、キジどこぶん殴って取って来たど。そしてこんど、
「ばさま、キジとって来たから、煮て食せろ」なて。
「んだなぁ」
 なて、喜んでいだんだど。
「おれ、皮むいて切って、こしゃって行んから」なて。
「おれ、山さ行って、柴ちいともらって来っから、煮ておけよ、ばば」なて。
「おーい」
 て、煮っだ。食ってみたら大変にうまいじも。
「ああ、甘いであんまいな」
 て食ったど。
「塩っぱいであんまいな」
 また食って、鍋ごど食ってしまったんだどはぁ。無くなったどこさ、じじ来たもんで、ただ、じじにおんつぁっだごではぁ。
 んだから、すっかり平らげっど、ことわざに、『ばばのキジ汁みたいだ』なて言うんだど。

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