15 狐女房

狩に行って、保名が逃げてきた狐ば、袴の裾さ隠してくれたどな。
 そして、狐が恩返しに葛の葉姫、婚約者(いいなづけ)に化けて来て、毎日機織ってくれて、保名のどこ食べさせっだんだな。そして出来た子どもは童寿丸て言うのだな。
 ところがそこさ葛の葉姫が来たもんで、とても居らんねぐなってはぁ、乳飲み子置いで信田の森さ行ったんだな。で、あんまり子どもが泣くもんで、乳母さまもいねうちに、保名が信田が森さ行って呼ばったって。そしたらガサガサ、ガサガサと言うて、笹薮から出てきたな、自分が助けてくれたときの狐だったて。
「そんな姿で出てきて、お乳も飲まんねがら、元の姫に返ってくれ」
 て言わっじゃから、化けて出てきて、乳のませだど。人間の交わりしたもんだから、信田が森で、あまたの狐にはぐれ者にさっで、はぎらっで、つまらなく狐が一生過したんだど。そうしてその子どもが日本一の占い師になったって。

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