16 錦糸堀

 むかし、江戸に錦糸堀ていうところある。
 ところが、ある人が、たまたま四十、五十てなっど精力がおとろえる。男の方で段々おとろえてくる。あるいは場合によっては女の方が強くて困ったり、何かえすることもある。
 ほんで、あるとき、きんたまの袋をひこいでみたんだそうだ。しぼってみた。ところがたちまちもよおした。
「はぁ、こいつぁ、すばらしいことあるもんだ」
 て、ある人さ語っど、
「きみ、商売やったらええがんべ」
 ていうことになったて。ほしてほの名も〈金しぼり〉という名前つけて、商売やったって。
 ところがほこさ、やっぱり少し精力のおとろえた人がくる。ほこの先生がしばって呉っど、たちまち、天狗の面、風呂敷さくるんだような、種きうり盗んだような格好して、その家から出て行ぐがったって。
 ほれだけ効果あるていうので、そこのしぼり屋の名前とって、錦糸堀ていう地名を、そこさつけたという。
 錦糸堀も、道頓堀だの、何堀だのていう堀でもあっかと思っていたら、そうでないがったど。
>>山鳥むかし 目次へ