11 狐と熊

 むかしむかし、狐と熊がいだった。非常に二人は仲よしで暮していたげんど、いつもだまされんなが熊で、いつももうけ取ってんのが、狐だったど。
 あるとき、狐が、
「熊さん、熊さん、まず、物取ってばり食うことも大切だげんども、二人して畑たがやして、畑から採って食うこと考えんべ」
 て狐が提案した。
「いや、はいつぁええごんだな」
 ていうわけで、ほしていろいろ、人参、大根、ほら長芋て、いろいろ作った。ほうして、狐がこういうこと言うた。
「熊さん、熊さ、おら、土から上の方、みなお前さ呉れっから、おれ、下の方だけでええがらはぁ」
 ていうて、「はぁ、んだか」ていうわけで、熊さん、あんまり頭のええぐないもんだから、大根、人参の葉っぱどか、芋の茎どかて持って行った。ほして二日三日行ってみたれば狐さ、人参の根の方、ほら大根、長芋て、ええものばりあるど。
「何だ、お前」
 て言うたら、
「あなた、土の上のええ、上の方ええていうから、上の方やって、おれぁ下の方とった」
 て言うた。
「おれさ、下の方呉でけらっしゃい」
「ええっだな」
 て、こんど作ったのは、瓜、西瓜、南瓜だったど。こだな、豚の尻尾みたいな根っこしか熊さんにはないがったど。こんどは狐が、南瓜よ西瓜よて、うまいものは自分が皆もって行った。
「いや、困ったもんだな」
 ていうたれば、ふくろうのおじさんが、
「ええこと教える。狐に騙さっでいるんだ」
「はぁ、何故するどええがんべ」
「いや、実は今、お百姓の人で、パカパカ引張ってくる馬のことだ」
「はいつ、なぜするんだ」
「狐ていうな、馬肉が大好きなんだ。ところが馬には急所があって、一個所噛みつかれっど、コロッと行ってしまうんだ。んだど、後は体中どこでも自由に食いしだい食いもんだ。そういうこと狐に言えよ」
 と、教えたど。と、
「急所ていうな、どこだ」
 ていうたら、
「後足のクダが急所だから、そこ一噛みかまれっど、馬ていうなストンと倒っで間もなく死んでしまう」
 て、こういうこと、狐さ教えだって。
「狐どの、狐どの、いや、ふくろうのおじさんにええこと聞いた。馬ていうな、急所あって、そこ噛みつくと、すとんと行ぐそうだい」
 狐は半分も聞かねうちはぁ、すぐ出かけて行って、百姓が代掻きして、馬つないでいるどさ行って、後足さ噛みつくべと思ったら、馬にすぽーんと蹴らっで死んでしまった。
 んだから、あんまりずるいことしても、結局はええことはないて、昔の人は言うたもんだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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