7 久米の仙人

 むかしむかし、久米ていう人が仙人になるべく、仙術を勉強した。仙人になるためには、仙術の修行が大切だていうた。仙術というものは、身につけるためには千日の修行をしなければならない。千日の修行ていうな、どういうことであるかというど、木にのぼって百日 ― ぶら下がっても何しても ―。それから土の中に百日。水の中に百日。火の中さ百日。飲まず百日、食わず百日。目を開けたまま百日、つむったまま百日。立ったまま百日、坐ったまま百日。
 その千日の仙術の修行を積んだら、空自由自在に飛べるぐなった。水の中もぐるすばらしい仙術を身につけたど。
 ところが、ある日、春先、天気のええ、ぽかぽかした日に、ずうっと飛んで行ったら、川原に若い女が、肌もあらわにして洗濯しておったど。その赤い腰巻き見たとたん、その仙術がとけて、川の中さ、ぼだっと落っでしまったていうんだな。んで、久米仙人が川さ落っだ話だど。どんぴんからりん、すっからりん。
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