5 おかめ長持

 むかしむかし、秋田の殿さまが、あるどっから秋田さ転封さっで、そして経済的にも非常に楽でなかったど。んで、これを立て直すためには、まず無駄なことをなくさなくてはなんない、そのためには、というわけで、国中の盲目を全部殺害して、しかもお城を造っどき、壁の中さ入っでしまったんだどはぁ。
 ところが、夜な夜な、はいつが化けて、出て、殿さま、非常に苦しめらっだど。ほして占師さ行ったらば、
「われわれは盲目だった。んだけんども、江戸を見たい。江戸を見たいから江戸さ()て行ってもらいたい」
 と、こういうこと言うたど。ほんではていうわけで、ほの殺した人の、全部の名前を書いて長持をかついで行ってみせるという約束をしたていうなで、ここ勤番で、参勤交替で通って、秋田屋に泊っどき、ほのすばらしい大きい長持があったて。ほの長持は、おかめ長持と称して、何入ったか庶民が分らねがったげんども、それを大事にして、それは必ず付きものであったど。はいつがやっぱり江戸さつれて行って、江戸を見せてきて、帰ってきて、また江戸さ持って行ぐって、行列にはかかんない、おかめ長持だったど。
 江戸さ行くど、名前書いたの、全部開帳して、「ここが江戸であるぞ」ていい聞かせてするようになってから、秋田の殿さまが、たたらんねぐなったど。どんぴんからりん、すっからりん。
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