4 福は外・鬼は内

 むかしむかし、あるところで、「福は内、鬼は外」始まった。
 ほっつでもこっつでも、豆ばらまきして、鬼は行ぐどこなくなった。ほっつこっつ廻ってみたらば、ほの、「福は外、鬼は内」ていう家あったて。
「はぁ、ここはええ家なもんだ」
 て、鬼どもはみなほこさ入って行ったんだど。ほうしたら、そこで鬼が集まって、酒盛りしったけて。すでに。ほしたらほこの家では、
「年に一回だから、おら家では常には福は内で鬼は外だ。節分の日だけは福は外で鬼は内だ。たった一日だけだ」
 て、こういうわけだど。そこでは一生懸命鬼さ御馳走しておったど。んで節分の日に馬鹿に景気ええ、どんちゃん、どんちゃん音するもんだから、隣のおっつぁんが、はいつのぞきに行ったんだど。ほしてのぞいてみたれば、鬼だ酔払っているもんだから、
「お前、酔払ってだが」
 て聞いだんだど。
「いや、おれは、正気だ」
 て言うたど。したら、
「いや、鐘馗さまがぁ」
 てだど。正気と鐘馗さまど間違って、鬼だ、みな逃げでったでだな。ほんでまず、打出の小槌、鬼だ忘っで行ったて。一つならず、二つならず、大したこと打出の小槌忘っでってしまったて。
 ところが、その打出の小槌ふってみたれば、そっちの打出の小槌は魚出るとか、こっちの打出の小槌は米が出る。あっちの打出の小槌は金が出るていうもんで、大した金持ちになったていうんだな。
 んだから、人と変ったことしてもええことあるもんだて、昔の人はいうたもんだど。どんぴんからりん、すっからりん。
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