3 山鳥むかし

 むかしむかし、ある百姓のおっつぁんが、干草刈りに行った。近間にないもんだから、だんだぇ遠くさ行って、思い切ってというわけで大分遠くさ行った。
 ところが、何だか鳥の切ないような、苦しんでるような声するもんだから、その方見たら山鳥がな、蛇にからまがっで、ほして非常に苦しんでおった。
 昔、山鳥ていうなは、わざと蛇に体をまきつかせて、そしてバタバタてすっど、蛇が八つざきになると、こういう風なこと言うたもんだ。
 ところが、しめつけらっで苦しんでいる。
「おかしいこともあるもんだな」
 ていうわけで、そのおっつぁんが行ってみたら、山鳥キジの下の方に子が十二匹もいたど。んだから、バダバダてすっど、その子が蛇が八つざきになるくらいな力があるもんだから、雛が死んでしまうていうことを考えて、伝家の宝刀、いわゆるバダバダを出さんねくて苦しんでおったわけだ。卵の時代は、わざと巻かせてバダバダってすっど、蛇がみな、プッツリ切れるが、ほれ、そういうことをしないで、苦しんでいた。見たら子がいる。
「ははぁ、読めた。子どもば殺してしまうと悪いから、バダバダしないでいたんだな」
 て、よしよしていうわけで、その蛇を取ってやっど思ったら、執念深い蛇なもんだから、なかなか離さない。何とも仕様なくて、その蛇殺してしまった。
 そして、殺して取ってくれて、その山鳥を助けてやった。
 それから、草刈って、それを干して帰んべと思ったら、何か、一天にわかにかき曇って、なまぐさい風がざばざば吹いてきてはぁ、おがしなことになったなぁと思ったら、とっぷり暗くなってしまった。
「ははぁ、こだい早く暗くなった。どっか泊るどこないべかなぁ」
 ていうわけで、そこらここら見たら、何か(やしろ)みたいな御神堂みたいな見えてきた。
「ああ、あそこさ行って泊めてもらうかな」
 て、そこさ行ったど。ところがきれいな、妖しくもきれいな女が現われて、
「お泊んなさい」
 こういうわけだ。て、喜んでほこさ上がって行ってみたら、ほの、みるみる形相が変って、口は耳まで割れて、そして青白い顔して、何だと思ったら、
「実は、おれは蛇の死霊だ。先ほどおれはお前に殺された蛇だ。お前を今夜ここで、苦しませ次第苦しませて殺してやるから、覚悟しろ」
 と、こういうこと言うたど。
「いやぁ、何とか助けてもらいたい。あんたを殺す気ないなだったげんども、ああいう風なわけで、お前が離さねから行きがかり上、殺してしまったげんど、おれは殺すつもりはなかったんだ」
 ていうた。
「いや、そんなこと言うたて駄目だ」
「何とか一つ」
 て、お願いした。
「いや、んだらば、ここにある鐘つき堂の鐘が、あしたの朝けまで、ゴーンと一発鳴ったら、お前ば助けてやる。どうだ。そういう風にして賭けないか」
 ていうたわけだ。
「いや、あの鐘がゴーンとなて、鳴るわけないっだな。もうおれはこんでお終いだなぁ」
 て、観念して、そこさ休んでだ。ところが明け方になったら、ゴーンと底ぶかく余韻を引いてその鐘が鳴ったって。ほして、
「約束だから仕方ない」
 と、解放さっで、何でその鐘鳴ったべと思ったら、ほの山鳥が一羽、毛が少し抜けて落ちておったど。
「ああ、昨日助けた山鳥だなぁ。んだげんども可哀そうなことしたなぁ」
 と思って、つくずくそこで眺めておった。ところが、そうこうしてるうちに、東の空が白んできて、太陽の光りがキラキラと差してきたら、そのキジがたちまち生き返って、そして首をさげながら、東の空に飛んで行った。そして、山鳥に、恩返しさっだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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