20 下田歌子

 下田歌子ざぁ、岐阜の子どもであった そうだ。下田女史となって女学校の校長 となったど。その人小さいとき、東京な のは、さぶしいとこだったどな。寺小屋 というとこで学問したそうだ。そんとき さぶしいようなとこばり通って行かんな ねがったど。そんとき、親に、
「魂は男だて女だて同じだげんども、女 というものは男に仕えなくてはなんねか ら、さからってはなんねえぞ」
 という教えようだったげんども、魂だ けはと、薙刀でも何でも教えらっじゃ人 だったてなぁ。そしてあるとき、夕方に なったそうだ。何かガタガタというの来 て、化物みたいなもの歌子の前さ立っ たってな。そしてこんどは、
「何だ、この畜生、人間さまさ、そんな こと化けて来て見たて負けないぞ、人間 さまだぞ。おれだから助けてやっけんど も、なんだぞ」
 と、おどしてやってから、その者はで きなかったど。
 それくらいの魂女だったど。
(海老名ちゃう)
>>牛方と山姥(四)目次へ