44 仏さまが牛

 あるとき、父の日に、父の法事すっか らと、和尚さんに行き会って、息子は和 尚さんどこ連(せ)て来たって。そしたところ が、その和尚さんが、たんと福しくない もんだから、ええ蒲団さ寝せらっでた。 その蒲団欲しくて、
「こんな蒲団さ寝たことない。なんにも いらねから、この蒲団欲しい」
 と、その蒲団持ち出したところぁ、
「こらこら、その蒲団持(たが)くな」
 と、こういう音するって。そうしたと ころ、
「誰かいたべかなぁ」
 と思って、どこ見てもいない。牛だけ 牛小屋にいただけだった。
「なんだって、牛ぁ音立てたんだべかな。 不思議だな」
 と思って、その牛さ声かけたって。そ したば牛が、
「おれが、ここの家守ってるために、こ こさ生まっじゃのだ。悪いことしたり、 いろいろしたり、家さ来て、さんね」
 という。牛は音たてたど。そのことを 今度ぁ息子さ話したとこぁ、
「いやいや、それとも気付かねでいたと こだ」
 そこで、牛を撫でていたれば、こんど はええ敷物さあがったって。
 そうして、和尚さまにお経を上げても らったりしたところぁ、心地ええく眠っ たかと思った、ところが、死んでしまっ た。
 んだから、死んでもええと思って守っ てるもんだから、大事にして、仏さまな んつぁ、いなくてなんね。
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