29 雀のヒョウタン

 おばぁさんが庭にいたところぁ、すず めはバタバタっと飛んで来たの、誰かに 石でもぶっつけらっじゃんだか、足痛め て飛んで来て、おばぁさんのとこの前さ 来たから、それを、
「これは可哀そうだ。これを一生懸命治 して呉れんべ」
 と思って、薬をつけて呉れたり、いろ いろな飯を食わせたりして、毎日毎日、 おばぁさんが傷を介抱しったら、たちま ち治って、そしてこんどぁ飛ぶように なったから、飛ばしてやったところがあ る時、すずめのことで、孫どもらに、
「よく、こがえなすずめなの、こがえし て大事にすっこど。おばぁさん」
 といわっだげんども、
「生きものは、むごさいなぁ、足悪くて は飛ばんねんだし、こがえしてもいらん ねんだと思って、むごさくてよ」
 と、おばぁさんが一生懸命で話して呉 れたど。
 ある日、なんだか喰わえて来て、ポロッ と落したもんだから、
「これぁ、めんどうして、足治して呉(け)た すずめでもあっかなぁ」
 と思って拾ってみたば、ヒョウタンの 種子くわえて来て、おばぁさんのとこさ、
「これを蒔け!」
 というごんだと思って、おばぁさんが 種子を一生懸命で蒔いたところぁ、ええ あんばいに育(おが)って実(な)ったわ、実ったわ。 大したもんで、隣さ呉れたり、そっちこっ ちさ呉れて、自分も、
「うまいことなぁ、このヒョウタン」
 なて、うんと喜んで、それから実が入っ て、ヒョウタン下げておくべと思ったと ころぁ、ヒョウタンさ米なの、金なの、 いっぱい入っていたごんだど。
「こりゃ、こりゃ、恩返ししてくれた」
 と話したところが、欲深かばぁさんが 来て、
「種子、おれどさ呉(く)ろ、おれぁどさばり、 ヒョウタン呉(け)ながったなぁ」
 と、貰って行って、いっぱい蒔いたと ころが、なって、自分ばり食ったりして、 こんどいっぱい残ったの下げて、またす ずめの話教えたところぁ自分がすずめ いっぱい居たどこさ行って、石をぶっつ ける、叩くぁして、足を一人で痛めて呉(く)っ で、そしてこんどは、そのすずめはとう とう片輪になって、飛びもさんねのだけ ど。ぶん投げるようにしてやって…。
「すずめは、お前さばり親切にしたげん ど、おらえさ持って来ない。お前さばり 持って来る。もらわんなね」
 と、蒔いたところが、やっぱしヒョウ タン実(な)ったど。そのヒョウタン、自分が 食って、一生懸命で育(おが)したな、みんな宝 欲しくて、みな下げっだところぁ、なん ぼ米ぁ溜っていたべ、金ぁ溜っていたべ と思って見に行ったところぁ、いやぁ 腐ってそこからウジは湧くやら、虫はた かるやら、蜂は出るやらで、とうとうお ばぁさんとおじいさんは大苦しみしたど。
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