27 夢判断

 むかし、摂津国に砥(と)鹿(が)というとこが あって、そこに牝鹿と牡鹿がいたげんど も、いや、どうして仲悪くて喧嘩ばりし ている。
 そうすっじど、その牡鹿は明石野の海 越えて、あっちの方の野鹿さ遊びに行(い)ん こんだけど。そいつ気に合わねくてだげ んど、まず行かれるには仕方なくて、牝 鹿がいたど。
 あるとき、牡鹿は、
「おれは昨晩(ゆんべ)、とんな夢を見た」
 と。
「おれぁ背中さ、いっぱい木なの草なの 生えた夢見たごんだ」
 と、牝鹿さ教えたど。
「んだから、お前、あげなとこさ行くな。 こういう風な夢ざぁええごんでないんだ。 お前いつか人でも何でも刺されるに違い ないんだ」
 と、牝鹿が言うたそうだ。そしたとこ ろぁ、そんでも行きたいもんだから、ま た行ったって。行ったらば、海の中の舟 で行き会って、これを見つけたというも んで、弓で捕らっだど。
 んだから、夢というものは、ええこと ざぁ判断するどええげんども、悪いこと に判断すっど、どういうもんだか、こが えなことあるんだな。
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