24 蛙の坊さま

 ある蓮の葉いっぱい植(う)わってた池のと ころに、蛙はお寺を、蓮の葉で建てて、 そこで毎日毎日、ゲロゲロゲロとお経を 読んでいたど。モグラのお父さんが、こ ろっと死んだほでに、そして、
「蓮の華、今日はなんぼ咲くかなぁ、蓮 の華咲いただけ葬いしなくてはなんね、 おれ。なんぼ咲いたかなぁ」
 と、一つ二つ三つ四つ…と数えている うちに七つ咲いたなだど。
「ああ、いそがしい。今日は七つ葬式の ともらいしなくちゃなんねえ」
 そのうちに、モグラの奥さんが、
「おらえの父さんが、まず、ころっと死 んだから、葬らって呉(く)れ」
 ゲロゲロギャーギャーというもんで、 お経を詠んで、
「父さんが死んで、どこさ行くもんだべ」
 というたば、
「極楽浄土に行ったから、ナムアミダブ ツ・ナムアミダブツ」
 と、喜んで帰って行った。その次に今 度は、ヤマガラの母さんが、
「おらえの子どもが巣から落ちて死んだ ごんだ。葬らってもらいたい」
 ゲロゲロゲロゲロと、葬らって、
「その子どもはどこさ行ったんだか なぁ」
 というたところが、
「子どもでは悪も何もないほでに、これ はお釈迦さまの手の上さあがっていた べ」
 喜んで、それもまた帰って行った。そ うしているうちに、こんどは、
「イモリぁ死んだから…」
 と、また来たごんだど。そして、
「イモリは長い病気をして死んだから、 葬らって呉(く)ろ」
 ゲロゲロゲロゲロと、また葬らって、 それもまた聞いたところぁ、
「ナムアミダブツ・ナムアミダブツ・極 楽極楽」
 と言わっで、喜んで、こんどは鯉は土 手の上さ鯉釣りが来て、釣らっだごんだ ど。鯉も葬らいさ来たど。
「あまりいやしくて、大きな口あいて 食ったから、そいつぁエンマ王さ行って、 鍋さ入って煮られるはぁ」
 といわっだごんだど。
 その次に蝉も兄弟が来て、葬らっても らって、
「おらえんな、どこさ行った?」
 というたところが、
「猫に聞け」
というたど。
 そして自分は、
「こんどは誰ぁ番だかな、飽きて来た」
 といいながら、まず酒なの飲んでいた ところが、土手の上に子どもどら..遊んで いて、石投げて、その蛙の背中さ石ぶっ つけたところぁ、
「ああ、痛い」
 というけぁ、蓮の葉から転んで行って、 そして腹大きくして、
「ああ、おれぁ番だな。ナムアミダブツ・ ナムアミダブツ」
 と死んだけど。
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