22 足柄山の金太郎

 足柄山の金太郎は、熊なの遊びに行か なくて、退屈して、
「いやいや、寒い寒い。熊が何としった かな。熊さん好きな蜜でも甕さ入っで 持っていって、御馳走すっかな。伺わな くてなんない。今まで稼いで呉(け)っで…」
 と思って、マサカリ背負わねで甕を抱 いて動物の村さ行ったごんだど。そした ば向うから、こんどぁ、兎は酒瓶さげて、
「どこさだ、兎さん」
 というたば、
「亀さんがあまり来ねから、酒でも御馳 走すんべどて、動物の村さ行くどこだ」
「ああ、ほんじゃ二人で行ったらええが んべな」
 と行ったところぁ、熊くん熊くん、と 戸叩いたら、ビッシリ錠かけて居ない。 こんどは隣の猿さんのところさ行って、
「猿さん、猿さん、熊さんは何としった んだか、錠かけて入らんねけぁ、何としっ たがな」
 というたば、
「冬ごもりに行ったなだ」
 こんどは兎が、
「亀さん、亀さん」
 というたば、それも錠かけてぐるっと 廻ってみたらば、いないくて、そして狸 くんどこさ行って、
「何としったか知らねか」
 というたところぁ、
「まず、春まで眠て来るってな」
「どこさ行ったべ」
 というたら、
「ずっと、谷のトンネル越えて行くと、 冬ごもりしったか知(し)んねえ」
 ということ聞いて、金太郎と行ったご んだど。そしたば、やっぱし熊が、少し 穴なの掘って、そこさ落葉なの敷いて、 乾し草なの掛けて、そこさゆっくり眠っ たっけど。
「働いたから、まずゆっくり冬ごもりし んなねべな。黙って、起さないで…」
 そこさ、また春になったら会いましょ、 目覚めたらこの蜜を食(く)って下さいと書い て置いて、こんど兎さんも、モクッと亀 さんが入って行ったのか、土入っていた の、
「目覚したら、この酒のんで下さい」
 と書いて置いて、また春になったら、 会いましょと、二人で別っだど。
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