17 帰らずの山

 越後に帰らずの山ざぁ、あっかったど な。
 その山さ行って、洞穴あるそうだなっ す。その横穴さ入って帰って来た人ざぁ、 いないくて、帰らずの山という。
 その山さ、ある神主が、山さ行かんね と言うことではなんねえから、山の神さ 御祈祷して、冠かむって山さ神官が入っ て行ったそうだ。そしたればどこまで 行っても暗い、松灯つけて行ったところ が、向うにヒカヒカヒカと、綺麗なよう なところあっかったど。そこまで行った ところが、川なのあって、石なの何綺麗 なんだか、とにかくええどこあっかった そうだ。そしたところが、その脇さ現わ れたのは、大きな蛇、とんぐりまって川 のぐるり綺麗にしているのだっけど。そ してその蛇の言うには、
「越後というとこさ、山にこういう穴あ るどこで、この山さ悪者住まれっこんだ らば、越後というものは、発展ができな い。家建つということは行かない。んだ から、おれは神様のお使い者で、ここ守っ ていんのだ」
 と言わっだど。そして、
「んだから、こういうこと、みんなどこ さ、こういう者いたということは知らさ ないで呉ろ」
 と語るのだけど。それからその人は 帰って来て話して、悪者がいつか来て、 山さ住むど、とにかく家なの建つことで きねから、守っていておくやんのだど。
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