16 強盗と領主

 摂津の国に、夜になっど何彼(か)に、だっ でく思っていた強盗がいたっけそうだ。 その強盗は寒くなったもんだから、追剥 してくれんべと思って、夜まず道の端さ 隠っでいたげんども、人通るにはええあ んばいな着物きた者もいなかったもんだ から、
「誰も今夜着物剥ぐこと出来ないな」
 と思っているうちに、向うから笛の音 するもんだから、何者(もん)だかと思ったとこ ろが、袴なの履いて、面立ちなのとって、 何か烏帽子みたいな冠った不思議なよう な人が、これは着物ええの着ったべなと 思って、その人、ぽえっと出きて、ふさ がったところが、その人に睨らまっで「何 者だ」と、こう言わっだところが、身ぶ るいするくらいに恐ろしい気して、
「おれが、こうこうしたもんだ。むごさ いものに生まっだもんだな。人間と生 まっで、夜、こげなことして人から盗っ て、恐(お)っかない思いして、縮んでいなく てなんね。むごさい人間だな」
 と言わっだど。
「それより、良い心をもって、よく昼間 みんなと応待して世の中面白く過したら ええんねが」
 と、そこで言わっで、
「おれぁどこさ、ついで来い」
 いや、逃げたくなったげんど、逃げた らその人に抑えらっだら、なじょなこと されっかと思って、逃げもさんねくて、 かまわず行ったところぁ、ええ御殿のよ うな門の中さ入れらっで、入れと、入っ たところが、
「そういう風な心を持たないむごさい者 というもんだべ。この上なし、むごさい 者だ。何でも不自由なものあった時には、 悪い心出さないで、おれぁどこさ来っじ ど、何でも呉れてやるから、綿入れ欲し いごんだら、綿入れくれる」
 と言うもんで、新しい綿入れもらって、
「また来いよ、おれは摂津の国を守って いる藤原保昌だ」
 と言うたど。
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