44 ねずみの嫁 

 ふくろうはねずみいっぱい獲って、眺 めっだところが、坊さんどころさ、バッ タリ落したど。坊さんがそのねずみ持 (たが) っ て、
「人間がねずみとか、ノミとかに生れ返 るそうだ。そのねずみはなじょな人間 だったんだか」
 と思って、魔法使いしてみたところが、 十五・六才になるええお姫さまになった ど。そしてこんど、その姫さ言うたど。
「お前なじょな夫さ嫁 (ゆ) きたい」
「おれは世界中の一番強い者さ行きたい。 考えてみっど、お天道さまより偉いもの はなかった」
 お天道さまさ行って、
「どうか、この娘をもらってくろ」
「いやいや、おれより偉いものは、まだ いた」
「その偉い者ざぁ誰だ」
 と聞いたところが、
「雲だ。雲はおれの照らしったどこさ来 て、おれのとこ隠すものは雲だ」
 そんで雲さ行って、
「ええ娘を嫁にもらってもらいたい」
「いやいや、おれよりまだ偉い者ぁいた」
「何者だ」
 と言うたところが、
「風だ、風はなんぼ雲がいっぱいにして みんべなという内に、風ぁ来ておれどこ 無くす。そういう力をもってる」
「そうか」
 と。それから風のところさ行ったら、
「それは山だ」
「なしてだ」
 と言うたら、
「おれぁ、なんぼ山さ行って、その山を 越えすべと思っても、越えすことも出来 ないし、破ることも出来ない」
 そしたところが、ポエンという音すっ から見たところが、大きなゴムマリぁ飛 んで来た。山越えして…。そうすっじど、
「これくらい偉い者ぁない」
 と思って、
「マリ殿、マリ殿、これを嫁にして呉 (く) ろ」
「いやいや、おれより強いものも、偉い ものもいた」
「何だ」
「ねずみだ。ねずみはおれが、こがえし てても、いつか歯立てらっで、破られっ ど、ペチャンコになってしまうから、ね ずみより偉いものはない」
 と、とうとうねずみはねずみに返って、 ねずみさ嫁に行ったど。
海老名ちゃう
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