43 糞くらえ 

 八百屋さんが、ある旦那さ行って、
「菜買って呉 (く) ろ、一貫目なんぼだ」
「ほんじゃ、高いから××にまけろ、い やこうだ」
 と言うもんだから、ごしゃえで八百屋 は「糞まくらい」と言ったもんだから、 ごしゃげらせてもいらんね。言う通りに 買うべと思って、呼ばって、
「言うなりに買うから置いて行け」
 と、こんどは、
「いや、目方なじょだ。いや、かじょだ」
 と言うもんで、とても久しく掛ったう ちに、八百屋は腹減って、台所にある焼 餅食ったごんだ。そうしたところぁ、い や腹減って知らねふりしていんべと思っ たげんど、そのうちに旦那出はって来て、 もじもじとして、
「おれも腹減って仕様なくて、焼餅くっ たごんだ」
「はぁ、食ったええげんど、あれは、ね ずみ殺し入っていたのだから、あれ食っ てからざぁ、生命なくなるな」
 と、こう言うたずも。そうすっじど、
「それは困ったごんだ。なじょしたら、 これは体さ毒になんねえか」
 と言うたところ、
「おれぁええごと教える」
 と、旦那。
「それさ、糞食うと治る」
 そしたば、生命いたましいもんだから、 八百屋は糞食ったそうだ。そしたば「糞 くらえ」と言うたもんだから、旦那さ向っ て糞食 (か) んなねくなったど。
海老名ちゃう
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