36 代りの首吊り 

 貧乏で貧乏で何とも仕方なくて、借金 もさんね、食うも食んねような有様な男 がいて、これぁ、
「死ぬより他ないもんだ」
 と思って、死ぬには縄でもなって首吊 りでもして死ぬべと思って、縄ないして、
「どこで死んだらええか」
 と、その縄持 (たが) って、ずうっと村のはん ずれさ行ったところが、これは本当にみ だれのない、ええあんばいの小屋あっけ ど。ここはええ場所だと思って入ってみ たば、まず吊るじど落ちて来るようなど ごばりで、何とも仕様ぁないなぁと眺め ているうちに、そこの横柱だら落ちて来 まいと思って見たところが、釘あったけ ど。その釘さええあんばいに引っかけて、 吊るべと思ったところが、壁はドサドサ と落ちて来たど。
 その中から銭ぁジャランジャランと落 ちて来たど。
「これはこれは、誰が隠しったのだべか、 何だべ」
 と考えていたげんども、その銭みな 拾って、家さ帰っていたところぁ、その 後さ、その銭隠しった人が、なじょなっ ていたんだかと思って、来てみたば、そ の銭はなくなっていたごんだと。
 そうすっど、
「困ったごんだ。この銭たよりにしてい たの、無くなっていた。おれぁ死ぬより 他ざぁない。まずなじょしたらええか」
 と思っていたら、その縄みつけて、そ の人は首吊りして死んだど。
海老名ちゃう
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