33 幸福な城 

 旅をして、何かあるかと、ずうっと廻っ て来たとき、あるどさ、立札たっていた の見たところが、その向うに川があって、 そこの向いに石の像があって、それを 持って向うの山さ一直線に登って行くど、 幸福を得られるという立札、見つけだず もな。
 そうすっじど、七人の勇士たちは行っ てみたところが、急流な川で、向う側さ など行かれる川でなかったど。一人の勇 士は、
「おれは勇気を出して、こういう風に全 国をめぐったもんだも、何かおれが功現 わさねで、行かんねごで」
 と言うことで、その川さ入って、流さっ だり、いろいろして、ようやく岸さ辿り ついたば、やっぱし人の像ある。
「ああ、これのごんだべ」
 と思って、その石を持 (たが) って、山さ一生 懸命に登って行ったところが、広いどこ あっかったど。それからずうっと行った ところが、松の木なのあって、城みたい なものあるごんだど。
「これは、これのことか」
 と思っているうちに、武装した者があ ちこちから来て、数十人の者が集まって くるような…。
「いや、おれは騙さっじゃ、ほんじえ(そ れで)こうした以上、仕方ないから、一 人でも余計におれは切って死ぬったても、 勇気出さんなねと思って、刀の束さ手当 てて待 (ま) ちでいたど。ところが武装した者 は、みな膝まづいて、礼釈 (れいしゃく) した。
「これはこれは、今までこがえな勇気あ る人は来てくれたことはない。この城は この位な人でないど持たんね。殿様は死 んだもんだから、城持つ人がいなくて 困っていたから、この城を受けもって呉 (く) ろ」
 と、こう願わっで、そこさ行って幸せ になったど。んだから、男というものは、 どこまでも勇気を出さんなねもんだど。
海老名ちゃう
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