21 菖蒲湯 

 娘のきれいなのさ、ええ男が毎晩入っ て来て、その身体 (なり) の冷たいことは、恐ろ しいような冷たぶりだど。そう親さ語っ たところぁ、
「ほんじゃ、これは不思議なもんだ」
 と。そしたところが、そんでは衣裳の 裾に針を刺させたところ、そして糸を 辿って行ったところぁ、蛇穴さ入って 行ったど。何か音すっど思ったところぁ、
「ああ、苦しい苦しい。俺は分んね。ほ んでも俺ぁ子ども入っで来たからええ」
「分んねごで、人間なんざぁ、賢こくて、 じきに子どもなど堕 (おと) す。菖蒲とモグサさ えお湯さ入っでその湯さ入れば、みな堕 (おち) るもんだ。んだから、人間さざぁ、悪い ことさんねんだぞ」
 という教えことだったど。そいつ聞い て来て、まず湯立てて入らせたところぁ、 蛇子はみなぞろぞろと出はったど。んだ から、五月の節句には、そのお湯立てて、 入れるんだど。そしてぐるりさ鬼は来ね ように、菖蒲とモグサさすのだった。
海老名ちゃう
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