9 かわうそと狐 

 かわうそは雑魚とり上手で、折々雑魚 さげて来て、そうすっど狐はそこで見て る。そして串さ刺してあぶって、匂いすっ ど、とにかく食だくて下 (さが) って来て、
「かわうそ殿、かわうそ殿、おれに御馳 走して呉 (く) ろ」
と。
「ほんじゃ、御馳走すんなねべな」
 いや、とにかく美味いもんだから、狐 は、
「もっと呉 (く) ろ」
「ほがえに、俺ぁ難儀してとって来たの だから、そいつは雑作ないごんだから、 教えてやっから、とってこい」
 と。そうすっじど、狐、
「なじょしてとるもんだ」
「それなぁ、感じた夜(寒くて肌に感じ る夜)、川さ行ってみっど、氷 (すが) 張ってい る。そこの氷の中さ尻尾を入っでやっど、 重たいほどかかる」
 と教えらっで、雑作ないごんだと思っ て、小便たれで穴あけて、そこさ尻尾を 入っでいたところぁ、ミリミリミリミリ という音するんだし、きつくミリミリと なって、
「なんぼか掛ったもんだべ」
 と喜こんで、そのうちに明るくなるよ うなものだから、引っぱって取んべと 思ったら、なかなかその尻尾はとれない。 キャーキャー、コンコンという音するよ うだなと、近所で聞いっだど。そんでま ず明るくなったから、一生懸命で引っ ぱったげんども、もげるたって、まず尻 尾は引っぱらんね訳だ。
 そのうちに、みんな来て、狐ば叩いた り、こずいたりして獲らっでしまったけ どはぁ。んだから狐だって、かわうそに あんまり易いことしたり、自分が人のも のばり食う気にぁ、ならんねもんだど。
海老名ちゃう
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