8 猿と蛙(びっき) 

 ある長者さまで餅搗いっだ日に、餅食 いたくなって、猿と蛙は、まず餅搗ぎど こさ行って、
「貴様、裏口から入って、長者さまには 一人孫いたな、そいつくらいめんごいの ないから、井戸さ入って、赤子の泣き真 似しろ。そうすっじど、確かに、餅搗け たとき、俺ぁ、臼がらみ背負って来っか ら、小屋あたりに隠っでいて…」
 と、二人で相談して、蛙は裏口から入っ て人に見つけらんねようにして、隠っで いで、
「今度ぁ、餅ぁ搗けた搗けた、まずこん どは食うばりだ」
 なんていう音すっどき、井戸の中さ 入って、ああというもんで、啼いたど。 すっど、
「これは、孫は井戸さ入ったからだ。何 にもかまねで助けて呉 (く) ろ」
 と言うことで、餅搗きやめて、井戸か いたところぁ、蛙ぁ目 (まなぐ) キロキロと光ら して、石さたぐり着いたど。
「これぁ、この蛙に相違ないから、ぶち 殺せ」
 と言うもんで、若衆は殺そうとすっど、
「蛙は人の真似するのぁ、憑られっど悪 (わ) れから、殺さねで呉 (く) ろよ」
 と言うことで、やっぱし土さ上さはだ がっで、気絶したりして、やっと生きて 山さ行ったところぁ、こんどぁ、猿は臼 背負って、山さ行ってたど。
 そうすっじど、分けて食ったらええが んべと、蛙ぁ言うたらば、
「いや、俺ぁ重たい思いして背負って来 たもの、分けてなの食 (か) んね」
 と。
「いや、俺も死にめに会って来たもの、 分けたらええがんべ」
「いや、こいつぁ、転ばして早く餅とっ た人は勝だ」
 と言うもんではぁ、臼転ばして、猿ぁ 臼に負けないで走って行ったところぁ、 さっぱり臼の中に餅はないど。そうした ところぁ、蛙は、
「俺は、なえでも分んねげんども、俺も行 (え) んかな」
 と思って、ビダリビダリと行ったとこ ろぁ、ツツギの株の上さ、ちゃんと餅あ がってホヤホヤホヤとしていて、これは 天の恵みだと思って、その上さあがって いたところぁ、臼の餅のひっついっだの、 なの食って、まず猿ぁ登って来たのを 見っだ。
「蛙、あんどき分けさえもすっどええ がったげんども、俺ぁ欲深くて悪いがっ たから、どうか半分分けて呉 (く) ろ」
「いや、あれほど言ったな、分けて呉れ らんね」
「そんで、慾張りで俺ばり食っていらん ねがら、ほんじゃ、尻出せ」
 と、熱いどこビダーッとぶっつけて呉 (け) たところぁ、猿ぁ、
「熱い熱い」
 と言うもんで、ひっぱって食ってるう ちに赤むくれになった。それをまた食 (く) だ くって、
「まいと呉 (く) ろ」
 と。そしたところが、
「顔出せ」
 そして顔を出したかと思うと、また熱 い餅ぶっつけてもらって、猿の尻 (けっつ) は赤 むくれ、顔も赤むくれ、んだからみんな で分けて食 (か) んなねと。
海老名ちゃう
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