6 団子どの 

 おじいさんとおばぁさんが、立派に働 いて、子どもも持たないがったど。まず ねつく穀物など不沙汰にしないで働いて いたおじいさんとおばぁさんだったど。
 ある時、屋敷掃くべと、家の前掃いた ところが豆拾って、
「これは、お地蔵さまさ、黄粉 (きなこ) はたいて、 団子上げ申すべ」
 と思って、まずお地蔵さまという、仏 さま心の内で上げ申しったという。そう すっど、カタンカタンという音すっから どて、お仏さまさ来てみたところが、団 子は転んで、コロコロコロと外まで出 (で) き たど。そうすっじど、
  団子どの 団子どの どこまでござる
  石の地蔵まで行くどこだ
 と言うから、かまわず追掛けて行った ところが、大きな穴さ、チョロエンと入っ て行ったど。そうすっじど、そこ覗いて みたば、広いとこにお地蔵さまは立って やった。
「俺も行ってみっかな」
 と思って行ってみたところぁ、お地蔵 さまの手の上さ、その団子あがっていた ど。そうすっど、
「お地蔵さま、こんな汚ない団子上られ んまいから、これは俺が上側食って、中 あがっておくやい」
 と進ぜて、お地蔵さまの言うには、
「晩げ、泊って行って呉 (く) ろ、いや困った ことに、鬼どもら、この間から、まず二 階荒して、博 奕 (ばくち) 打ちということ始めて 困ったごんたから、何としたらええがど て、考えていたところだから、今夜一晩 泊って行って呉ろ」
 と。
「まず、二階さ上がるには、俺ぁ膝さ上 れ」
「いや、お地蔵さまの膝さなど上がらん ね」
「いや、上がらんねど行かんねから、上 がれ」
 そして、お地蔵さまの膝さ上がり、今 度ぁ手さ上がれ、肩さ上がれ、頭さ上が れと。
「いや、頭なの、とにかく何と言われ申 したて、俺ぁ足ぁ曲っから上がらんね」
「そんでないければ、二階さ行かんねか ら、梯子の勘定して登れ」
 と。そして二階さ上がって隠っで、押 入れの中さでも入ってろと、そして、
「一番・二番・三番鶏というように、ま ずトトケロ・ケーというと、二番三番と いうと、明け方になっから、それまで帰っ て行くように、その鶏の真似しろ」
 と。そのお地蔵さまに言わっで、そう しているうちに、やっぱり隠っで音聞 いっだらば、何処ざぁなく集まって、ま ず博奕打ちすると、三時頃、トトケロ・ ケーと、一番鶏啼ったから、早くまず一 生懸命。二番・三番鶏、ほんじゃまず、 明るくなっじど困っから、この銭などか まねではぁ、明日の晩来るようにはぁ、 置いて逃げてあえべと、置いて逃げて 行ったど。そうすっど、お地蔵さん、
「おじいさん、おじいさん、その金をみ な集めて持って来い。みんな集めてそし てまた頭から降 (お) ちて来い」
 と。落ちてこらんねから、仕方なしに お地蔵さんの頭など勿体ないげんども、 と思って降ちて来たらば、こんどはその 金みな呉れっから、それで裕福に暮せよ と、帰って来たど。
 そこさ、隣のばさま、稼ぎもしないで 火貰いに来たば、その米を買ったり、着 物を着たりしたところを見て、
「何して、そがえに何処からか盗んで来 たか」
「いや、こうこうした訳だ」
「おらも、じさま、やろべ」
 と。そしてまず転びもしない団子を、 どこに穴ある、と、ずうっと行ってみた ところぁ、大きな穴ある。そこさ行った らば、やっぱし穴から入れてやって、お 地蔵さまさ団子の汚ないどこ進ぜて登れ とも言わんねどこさ登って、頭さ登って いたば、また夜、鬼ぁ来たど。そうすっど、
「いや、みな銭なんとした。地蔵、こりゃ 何とした。ここさ誰も来なかったか、お 地蔵は何かしたでないか」
 なんて、うんという声するけど。そし てまた、じさまに聞いた通りに、隣のじ さまもしていたところぁ、あんまり早く、 鶏の声したってな。
「不思議だな。あまり早いなぁ、こりゃ。 こがえに早く夜明けるもんでないんだ」
 と言ううちに、また鶏の音させたど。 そうすっど、不思議だからというもんで、
「じさま、あの銭よこせ」
「ない」
「隣のじさま…」
 なんて言うたって、分んねもんだから、 とうとうそこで、うんと攻めらっで来た ど。んだから決して人真似すんなど。
海老名ちゃう
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