24 寝太郎の蜂

 寝太郎ざぁ稼ぐ嫌(やん)だもんだから、なじょかしてうまいもの食たいもんだし、毎日稼ぐよりも寝てて、〈果報は寝て待じろ〉なんて毎日寝て待ってだと。あんまり寝てばりいるもんだから、人など居ないかと思って丁度戸の口のとこさ、亀蜂の巣こんがえ大きな巣くったったと。
「いやいや、こいつ何とかして、あそこの質屋している旦那は物好きではあるし、金は持ったし、この蜂をあの質屋さ質おいて何とか仕様ないか」
 と考えたと。それから夜遅く雨降る晩、そんときは亀蜂は飛ばないから、そん時木の箱大きな作って、スパーッと入っでしまった。その箱さ質屋の定紋など紙で切り抜いて貼ったりして、質屋さもって行って、
「番頭さん、俺はすばらしいもの持って来た。一つの道具というもんだげんど、ネジ一つ掛けっことないし、何唄でも聞かれる。先ずあんだ聞いてみておくやい」
 亀蜂は中でわんわんわんと言うもんだから、何の唄だかも分んねげんども、何の唄でも唄っているようで、
「こいつはこの唄だごで…」
 と言うたと。そうすっど旦那どさ持って行って、
「こいつは今迄とったことない質だから、余程貸してやってええ」
 と、すばらしく借っで来たと。そんで旦那も聞いてみっど、毎日さまざまな唄うたうもんだからオッカさも、
「いやぁ、すばらしい器械なもんだ」
 とて、いたと。んだげんども何な器械なもんだか見たくて、見たくて仕様なかったと。そしてそって紙はがして見たと。そしたところが亀蜂いっぱい出はって来て、旦那もオッカもそっちこっち刺さっでしまったと。そん時旦那は言うたと。
「いやいや、こりゃ。番頭なんぼなえだて、おらえでは質屋だから、七は何をとってもええげんども、こんな八までとるもんでない」
 と、番頭は旦那にうんと、おんつぁっだと。どーびんと。

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