11 足軽のお菜(かず)

 まいど、僅か三人扶持か五人扶持もらってた足軽ぁいたったと。
 足軽だっても侍の内なもんだから、お飯(まま)食う時はいつでも二皿付けて、お吸物お椀つけて置かねと、面杯わるくて仕様なかったと。そんでもそうするには、お菜(かず)さばり銭かかって何とも困ったと。家内中食うくらいもかかったと。そんで困ったもんだ、足軽よりもオカタが困ったと。そんで、なじょかさんなねかと…。足軽とオカタ二人考えてみて、オカタが考えついたと。
「ほんじゃらば、こうしたらええがんべ。侍たるものは鯛ぐらいつけないでは、面杯が悪いから」
 と、木切って来て、鯛を彫物みたいに拵えてくれたと。そしてお吸物などにはいつでもエビなど入れるように、エビなど、マグロなども拵えて呉(け)たんだと。
「そしてな、毎日、この鯛さ味噌つけてあぶっから、皿さつけて誰に来らっじゃって、こいつは、木とは見えねごで。んじゃから、あんだ味噌ば持(たが)って舐めてくってけろ。そうすっどさっぱり銭かかんないで、食って行かれっから…」
「んじゃ、俺は明日からそうすっから」
 と、オカタに拵わせたと。オカタは平皿のものから吸物の魚まで皆拵って、立派な侍が食ってるようなお膳に食ってっかったと。んだから、物の倹約というものは考えようで、どうでもなるもんだと。どーびんと。
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