21 馬     娘

 南部の恐山さ行くと、子どもに会われると言わっで、行ったど。そうして、一人娘に死なっで、毎日泣いっだのさ、ある托鉢坊主に教えらっで行ったど。そうして行ったれば、
「決して、夜、夜中に、何日かいるじど、娘が来っから、言葉は掛けんなよ」
 て言わっじゃんだど。
 そして夜中に、恐山のお堂さ行ったど。
 その娘が死んだときの、棺さ入ったときの美しい衣裳で来たんだど。そうすっじど、まず、わらわらと、言葉かけんなと言わっだの、耐(こら)えらんねくて、親たち両方から行って、たぐついて、そうしたところが、その娘は、ガタガタ・ガタガタというけぁ、身振いしったけぁ、馬になったんだけど。
「おれは何にも、お前だに子どもになって可愛いがらっで、育てらっで、おれは早く死んだ。おれはそっちの家に飼わっだ馬だ。うんとこき使わっだあげく、乾し殺さっだ。このうらみを、なじょして払して呉(け)っじゃらええかしんなくて、死んでも思い晴れねから、お前だの子どもに生(うま)っじゃのだ。仇取って呉れんなね、此処まで来た限りは、今度は、おれ、生命とってやんなね」
 て言わっで、和尚さまに御祈祷してもらって、やっと馬の霊を静めてもらって、帰って来て、あきらめたど。
 んだから、早く子どもが死ぬというのは、皆仇というもんだから、
「むごさがった、いま一ぺん行き会いたかったなんて思わないで、親に苦労掛けんのは、仇の子だから、あきらめなさい」
 て、和尚さんに教えられてもどって来たど。
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