19 油取り

 むかし、稼ぎたくなくて、うまいもの食って、ええ着物きて、唯ばり暮したい娘がいだったど。こいつ、神さまさ拝(おが)み申したど。
「神さま、どうか、唯暮される、うまいもの食って、ええ衣裳着て、楽な暮しされるように」
 て、神さまさ拝み申したど。そして願掛けしったところぁ、ある日、御所車のような車ひっぱって迎えに来らっだど。そして娘のとこさ、ひょこっとその車来て、
「お前か、唯いて、暮したいて神さまさ拝んだな」
「ぼだっし」
「ほんじゃ、この車さのれ」
 て、連(せ)て行って、その車さのせらっで行ったところぁ、御殿のようなええどこさ連(せ)て行かっだって。毎日、うまいもの食せらっで、ええ着物きせらっで、唯ばり置かっで、大きい屋敷。
「こっからこっちゃ行かんねぞ、そっちゃ行くなよ」
 て、ついていられる。何日もぶらぶらて暮しているうちに、飽きて来たんだって。そして飽きて行かんねと言わっだとこさ行って、だんだん、そおっと奥さ入ってみたら、向うの方で、何だか匂いが悪い、そいつさ、
「助けて呉ろ、助けて呉ろ」
 という音ぁするし、何なもんだべなと、そっと開けてみたれば、大きいワタシ掛けて、人焼きしったなだど。そっから、ダラダラ・ダラダラと油が流っで来んの、甕コ置いて、油とりだど。そうしてはぁ、その娘が魂消て、来てはぁ、神さまさ拝んだもんだから、神さまは、決して、「唯いて暮して行かれるようなことはない」ということを見せしめに、そこ見せんだべ。んだから、みんなそんなことは望まんないもんだ。
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