18 九兵衛

 むかし、うんと博(ばく)奕(ち)打ち好きな男いて、毎晩げのように博奕打ちに行って、親父に、なんぼおんつぁっでもはぁ、分んなくていたな、ある晩げ、負けてはぁ、衣裳も何も剥ぎ取らっで、丸裸で来たんだど。来たげんども恥止(しようし)くて、街道歩かんねから、田ンぼ歩って来たんだど。そしたら蛙(びっき)は、
「ハダカダ、ハダカダ」
 て鳴いたど。この畜生、人のとこ口あましあがって、蛙(びっき)の分際として、引っぱだきつけて呉れましょうと、はたきつけたんだど。そしたら、
「キュウ、ベェー」
「この畜生、死んでからまで人口あましする」
 て、こんどは踏んずけて来たど。その人の名前は九兵衛と名付っていたんだど。
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