16 南の山の馬鹿聟

     (一)
 馬鹿聟ぁ、いだった。
「嫁の口さばり食せだってな、嫁ざぁ居ねがらな、尻の口さも食せらんなねがらな」
 て、教えらっで、馬鹿聟は、
「ほら、食え。ほら食え」
 て、嫁の寝っだうしろさ行って、当てがっていたど。
 馬鹿聟ざぁ、そういうもんだ。
     (二)
 嫁もらってから、
「嫁の家さ行ったら、姑さま出て御座ったらば、皿だの、瀬戸ものなの出っから、そんどきは、南京皿か京皿か、唐(から)からでも渡って来たのだべかって、立派なもの出されっから、そういう風に賞めんなねぞ」
 て言わっで行ったど。八十才先になるような、婆(ば)んちゃが出てござったど。そしたば、こんど、婆(ば)んちゃ褒めたんだど。
「いやいや、南京ばばぁか、京ばばぁか、唐から渡って来た、ばさまだべがっす」
 て、褒めたど。ばさま魂消たど。
     (三)
 寝相わるいもんだから、枕ば頭さ縛って寝たんだど。寝たらば枕天井の方向いっだど。
 馬鹿聟みたいにしていらんねんだからな。
     (四)
 馬鹿聟に頼んで用足しにやったれば、「忘れんなよ」て言うてやったれば、途中の川で跳ねて、「ドッコイショ」て言うど、「ドッコイショ・ドッコイショ」と行ったってな。
 そして用足しでなくて、ドッコイショの用足しだったど。
     (五)
 尻さヤキメシ当てて、その嫁がおかしくて笑って屁たっだれば、
「熱くないから、さまさねったってええ」
 と、馬鹿聟が言うたど。
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