12 瓜姫子とアマノジャク

 お盆のとき上げっだな、あまり大きい瓜割ったれば、おぼこ出たんだど。そして大事におがして機織りさせれば機織り、着物拵えさせれば着物拵って、まず何さんねなてない、綺麗な瓜のような姫で瓜姫子と名付(つ)けたんだど。
 じさまとばさま、稼ぎに行くときには、びだんと錠掛けて行くのだったど。
「なんぼ、じじちゃ・ばばちゃの真似して来たたて、誰来たて、戸を開けんなよ」
 て教えて行くなだけど。
 瓜姫子が機織りしていっど、アマノジャクが来たど。そして、
「ここ、戸開けて呉(け)ろ」
 て、ばっちゃの声の真似して来て、片一方は、んだかと思って、開けて呉(け)っかと思ったげんども、
「ここの戸開けっど、ごしゃがれっから、開けらんね」
 て言うど、
「んじゃ、ちいとええごで、ちいとええごで」
 て。
「一分だてええごで、二分だてええごで、こればり開けだて、ごしゃがんねごで」
 て、段々に開けて、手入るまでに開けたどこぁ、こんどはビリビリ機場から瓜姫子を引ずり出してはぁ、殺してしまったんだど。
 じっちゃとばっちゃ帰って来たときには、アマノジャクが瓜姫子を食って、瓜姫子に化けっだど。
「ウリヒメゴ!」て来たところが、
「じっちゃとばっちゃ、今来たとこだ」
  瓜姫子の機に
  アマノジャクぁぶちのって
  キーコ パテン
  キーコ パテン
 ていうもんだから、
「さては、これは、ほだかな」
 て思って行ってみたら、機さ血ぁついているんだし、アマノジャクを引っつかまえて、この畜生というもんで、殺したけど。
    ×     ×
 アマノジャクは当りまえに数を数えたりしないで、逆に数えたりするし、つむじ曲りだったど。また時刻(とき)の数え方も十干十二支を使ってむずかしくしたのは、アマノジャクに真似さんねように、あんな風にしたんだど。
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