10 こぶとり

 正直なじさまとばさまと、いじわるなじじとばばいたど。
 正直なじさまが、鬼でてきたもんだから、青鬼だの赤鬼だから、じさまは人だから、鬼の踊りさはまって、その踊り踊っどき、数え方したど。
  一(いち)ビキ、二(に)ビキ、三ビキ、四(し)ビキ
  おれも出て、五(ご)ビキだい
ドンドコドンのソレワイサ
 と、じさまも混(まざ)って踊ったのだったど。あんまりそのじさま踊り上手で、おもしゃいもんだから、
「いまと(もっと)、踊れ」
「行くはぁ」
 ていうもんだから、
「明日(あした)来いよ、明日の晩げ来いよ、是非とも来いよ」
「来るから、来るから」
 ていうたげんども、
「来らんねど困っから、こぶ取ってやらんなね」
 て、取(と)っかえさっだど。そしてこぶぁなくなった。
 そして次の日、意地のわるいばばが、日暮っで行って、こぶのないとこ見て、
「おれ、じさまもやんなね」
 て、そこの山さ行って、鬼ぁ出てきたとき、踊り踊んのさ混(まざ)ったげんど、踊りも唄も下手だべ、
「ゆんべあずかったこぶも、やっからはぁ」
 て、こっちさ、くっつけらっで、泣き泣き行ったど。
 んだから、決して人真似なのさんねど。
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